こんにちは、出張僧侶のもくれんです。

梅雨の蒸し暑い季節になりました。
この時期になると、お寺では蚊がよく飛ぶので、キンチョーの蚊取り線香を朝から焚きます。

さて今回は、初対面でキンチョー(緊張)するお話。初対面で伺うお宅のお話です。

葬テラスさんで法要のお申し込みをお受けしてから、遅くとも前日までには、電話にてご挨拶を済ませます。

「初めまして。僧侶のもくれんと申します。○月○日、○周忌のことで、少しお打ち合わせさせて頂きます。」
法要の日時、ご住所、故人のことを一通り伺います。

「法要までに、どんなものを準備すれば良いか?」というご質問があれば、
仏間の広さや参列人数など、状況を踏まえてお答えしていきます。

当日は、予定時刻の少し前にはお家へ到着し、玄関のベルを押します。

「こんにちは、もくれんと申します。本日は、宜しくお願い致します。」

この時、お家の方は、初めて僧侶を家にあげることになり、とっても緊張している方が多いのです。

何喋っていいのかわからない…とドギマギしているのが伝わり、こちらまで緊張が移ってしまうこともしばしば。

「何を喋ろう…こんなこと聞いたら失礼かな?」と考える方が多いと思いますが、
わからないことは遠慮なく聞いた方が良いです。

怒る方はいないと思います。

私たちはお家へ向かってくるまでに、会話が詰まらない程度に、大まかな話題は考えてきているのです。
なので、お家の方は何も身構えなくて良いのです。

会話に困ったら、遠慮なく僧侶に委ねてください。
「お寺から、どのくらい掛かりましたか?」
「仏前への並べ方はこれで合ってますか?」

質問をすれば、急ぎでない限りどんな僧侶も喜んで答えてくださると思います。
よく喋る僧侶は、ずっと喋ってます。笑

ただ、初めての方には絶対伝わらない事があります。

法要の前に、“着替える”という行動です。

こちらが何も考えず「準備しますので、着替えますね。」と言うと、「全部脱ぐから、この部屋から出て行って、と言うことか?」と察知し、
全員が別の部屋へ行こうとされますが、僧侶の説明不足です。

僧侶が脱ぐのは、黒い衣まで。
下には白衣、さらには襦袢という肌着まで着てますので、全部脱ぐわけではないのです。
略装から正装に“上着だけ着替える”ということなのです。

初めて伺うお家にも、さらっと言ってしまうことがありますが、
「あっ、着替えるのは上着だけです!」と訂正したことが何度かあります。

こうして正装に着替え、焼香、お線香、ローソクを準備して、法要を進めていきます。

法要の際に着用している袈裟は、五条(ごじょう)、七条(しちじょう)などと呼ばれ、
七条は、大きな風呂敷のような袈裟を左肩に掛けて結び、右肩は外に出します。

この着方を、偏袒右肩(へんだんうけん)と呼ばれ、右は正、左は邪という古代インドからの風習に基づき、
尊ぶべき方に対し、敬礼を示すものであります。

私は、右肩を出す形を、“ひと肌脱いでいる“という気持ちの表れであることも間違ってないと思っています。
故人の供養の為でもありますし、残された遺族の為にもひと肌脱ぎ、安らぎや癒しを感じて頂ける様に、精一杯勤めることも大事かなと思っております。

「最初緊張していたら、近所のパン屋さんの話をしたら和むかなぁ。
電話で話した時は少し落ち込んでいたけど、手を合わせる大事さを話したら、少しは元気になってもらえるかなぁ。…」

僧侶は、こういった面持ちで誰かのことを思い、今日も法要へ向かうのであります。

写真は、先日伺ったお宅の隣で、全く動かないネコちゃん。

出張僧侶のちょっと良い話